乞食とは、通りなどで人から金や品物をもらって生活する者たちです。
彼らは見るからにみすぼらしい、気の毒そうに思えるような格好をしています。ぼさぼさの頭、粗末な服装、それに怪我や病気を患っているような様子です。
ある程度、商業の発達した都市ならば必ずといっていいほどによく登場します。衛兵たちによって取り締まりや見回りがあれば姿を消すこともありますが、しかしそれも多くは裏通りへ引っ込んでいるだけのようです。
さて、乞食とひとくちにいっても、彼らは大きく三つのパターンに分けることができます。
ひとつは何らかの理由で働くことができなくなった者が、生活のために物乞いの道を選ばざるを得なかった場合。戦災や病気などで肉体的、あるいは精神的な障害を背負い、仕方なしに乞食となった者たちです。乞食と呼ばれる者たちの中でほとんどを占めているようです。
ふたつめは、偽物の乞食です。働くのが嫌で、弱者を装っている場合です。彼らは優れた演技力を磨いて、障害や病気のふりをして相手を騙そうとします。足をひきずって物乞いをしていた者が、取り締まりの衛兵を見かけた途端に走って逃げた…なんてこともよくある光景です。
みっつめは、乞食というものが職業または身分階級として確立されている場合です。この場合は、彼らにとって「物乞い」と行為は当然の権利であり、れっきとした労働ということになります。
乞食の中には伝染病を患っていたり、それでなくとも不潔であったり(あるいはそれを装っていたり)するので、街の住民たちからは快く思われていませんし、なかば無視されています。そこに彼らがいようがいまいが、誰も気にしません。誰もがその存在を無視し、乞食の前では自分たちだけの会話や行動をしてしまいがちです。そのためでしょうか、彼らの中には町中で起こった様々な事件や情報に精通している者もいます。
こうした乞食の利点(?)に目をつけ、他国の情勢を探るために諜報員を乞食として派遣することもありますし、盗賊ギルドなどでは町中の乞食を組織として統率することもあるようです。
また、その他では巡礼者や修行僧などのなかにも、寺院の門前や往来の激しい広場や通りなどで施しの米や金銭を受けることがあります。これも乞食の一種ですが、道ばたに座り込むことはなく直立して行うのが普通なようです。現実世界でいうところの托鉢ですね。これは信者との交流でもあり、修行でもあります。
ささいなうわさ話から、誰も知らないはずの重大な秘密まで。市街での冒険において情報の不足を感じたら、彼らに金銭を積んでみるのもひとつの手でしょう。最下層に生きる忌まわしい存在として扱われることもある彼らですが、しかし決して侮ることはできません。