生地も焼かずば食われまいに

　パンとは、小麦粉などに水、酵母、塩などを咥えて作った生地を発酵させたあと焼いた食品です。現実世界だけでなく、ファンタジー世界でも広く多くの人々、種族に食されています。

　小麦の他にも大麦、トウモロコシ、蕎麦など使われる材料は様々で、また、発酵させずに焼いたパンも多く見られます。

　一般の人々が口にするパンは、多くは町のパン屋が焼き上げたもので、国や地方によって様々な形や種類のものが発展しています。パン屋といっても、自ら粉を練り上げるところから一貫してパン作りを行っている店だけではなく、住民が練って持ち込んだ生地を焼き上げるだけのパン屋もあります。

　パンが主食の地域では、価格や品質が一定に保つように規制されている場合がありますが、農民や下層市民はより安価な穀物を混ぜたものを普段の食事とすることが多いようです。

　さて、冒険者がよくお世話になっているのは、日常の主食としてのパンではなく、日持ちが良いように水分がなくなるまで焼いたビスケットや堅焼きパンなどの保存食や携行食でしょう。これらはそのままかじるでなく、水や湯などで戻してやわらくしてから食べるタイプのものもあります。

　行糧としてのパンには、十分な栄養が摂れるように様々な穀物や薬草を練り込んだものもあり、あるいは秘伝のレシピによる魔法的な効能を秘めたものも存在しているようです。一度口にすれば何日かは何も食べなくても平気であるとか、疲れ切った体にたちまちのうちにみなぎる力を与えてくれるなど、こうした特殊なパンがあればきっと苦難に満ちた冒険の支えにもなるでしょう。