背後に忍び寄る虎の爪

バグナク

バグナクとは、金属製の爪のような隠し武器です。大きさは手のひらに収まる程度。指を通す輪を備えていて、握り拳を作ったときにちょうど指と指の隙間から爪状の部分が飛び出た格好になるようになっています。

使い方としてはその手を突き出したり、あるいは相手を引っ掻くというもので、4つまたは5つの爪によってえぐられた傷口は、名前の由来でもある虎の爪痕のように見えます。

その傷の間隔は狭く、非常に治りにくいものとなり、さらにもしこの爪に毒が塗られていた場合には、犠牲者は生存の可能性を断たれることになるでしょう。

バグナクは隠しやすく、とっさの場合にも指にはめて握りこむだけですむことから、もっぱら市街での活動を主とする盗賊や、手ぶらを装った暗殺者たちに好まれて使われています。

携帯性に優れた武器ですが、その代わりに甲冑を着込んだ相手にはまったく刃が立ちません。革鎧程度なら引き裂くことも可能かも知れませんが、それでも致命傷を与えるのは難しいでしょう。そのためか、戦士や騎士が用いることはほぼありません。また、予備の武器としても選ばれてはいないようです。

しかし逆に言えば、鎧を身につけていない者にとってはこれほど恐ろしい武器はないともいえます。

バリエーションのひとつとして、全長20~30cmほどの大型のバグナクも登場することがありますが、これはバグナウとしてではなくクローやジャマダハル、あるいはセスタスの一種として扱われることもあるようです。

バグナクは、盗賊や暗殺者が用いる武器ではありますが、格闘技を用いて戦う武道家や武闘家にも好まれています。もちろんこの場合は正々堂々した戦いの場で活躍しています。

魔法の武器としてのバグナクもありますが、それほど多くのバリエーションはありません。主に、与えた傷口に自動的に毒を発生させる追加効果を持つようなものがちらほらと存在するくらいです。ポイズンクロー、ポイズンバグナウといった名称で取り扱われています。格闘家が用いるものを除いて、バグナクという武器の使用目的や状況は限られていることがわかります。あまり冒険には向かない、あるいは注目のされない武器と言えるでしょう。

備考

バグ・ナクバグ・ナウはもともとインドの武器で、その名も"虎の爪"を意味しています。インドはこういった殺傷力の高い小型の武器が非常に多く見られます。バグナウも現実の世界において暗殺者の武器として実際に用いられたそうです。たしかに、護身用……としてはちょっと凶悪な形状ですね。


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