バンシーとは、死を予告するとされる妖精です。夜、いずこからともなく泣き声が聞こえてくることがあり、それは、近く死者が出ることを予知したバンシーが悲しんでいるのだといわれています。
その容姿は長い髪の美しい娘であることが多いようですが、地域によってはエルフに似ていたり、あるいはシワだらけのおばあさんとして登場することもあります。ほとんどに共通するのは、その肌の青白さでしょうか。まるで病人のようにも見えるようです。
バンシーは川の畔や人家近くの木立などにあらわれます。光を嫌っているようなので、暗がりで遭遇することが多いでしょう。
面と向かって敵対するような妖精ではありませんが、もし戦えば、おそらく苦戦を強いられることになります。鋭い爪と、見かけによらない強い力、さらに魔力を秘めた金きり声を上げることもあるからです。その絶叫を聞いた者は、狂い死にするといわれています。
恐るべき力を秘めたバンシー。彼女を、ただの妖精などではなく、死神や上級精霊というような高位の存在だという説もあります。
バンシーはときどき、近く死ぬ運命にある者の目の前に現れて、泣きながらその人物を指差すこともあるなど不吉な存在である一方、遠く離れた家族の死を知らせてくれる、といった一種の守り神のような一面ももっています。積極的に退治するべきモンスターではないのかもしれません。
また、バンシーはこういった妖怪、妖精の類いではなく、悲しみを司る精神の精霊としても登場します。悲しみの感情が刺激されるのは、その人の精神に宿るバンシーの力が強くなっているから、というわけです。
暴走したバンシー、あるいは悪意のあるバンシーに取り憑かれてしまうと、その者は深い悲しみに襲われてしまいます。悪くすれば悲しみのあまり、自害してしまう者もいるほどです。バンシーに連れて行かれた者の魂がどうなるのか、それは誰にもわかりません。
バンシーは、アイルランドおよびスコットランドに伝わる女の妖精で、ケルト語で「フェアリーの女('ban'は女、'shee'は妖精)」という意味の言葉からきているそうです(異説もあるようです)。家人の死を告げる存在とも。いわゆる「虫の知らせ」のようなものの表れなのかもしれませ。