服装の持つ意味は、身体の保護、装飾、顕示・誇示といったところでしょうか。アイデンティティの明示の役割も持っています。
ファンタジー世界に住む人々の服装は現実世界と同様、実に様々です。大きく分けても、地域による違い、男女による違い、身分による違いがあります。
地域による違いは、その土地その土地の風土に合わせたもので、気温や湿度に影響を受けます。温暖であれば布地の枚数や厚みは減りますし、湿度が高ければ風通しのよい生地が好まれ、服の形も立体的なものよりは平面のものが多くなります。
男女による違いは体型が違うというのもありますが、スカートとパンツなどの形状などの他、柄や装飾などにも表れます。表現したい目標というか、見られる事に対する意識の度合いの違いとも言えそうです。それらの要求度の低い冒険者や旅人の旅装束などは、こういった違いはあまり目立ちません。せいぜいが体型による違いくらいのものでしょう。
見られる事に対する意識といえば、やはり階級による違いでしょう。どうやら服装というものは、身分が高くなるにつれて一度に着る枚数や飾りの数が増えていくことが多いようです。ときには実用性よりも美的なデザインを優先することもあります。
町で暮らす人々は、普段は動きやすく快適な服を身につけます。家庭の経済状況にもよりますが、特別な日や冠婚葬祭用に着る服もタンスの中に仕舞われていることでしょう。職人や商人など、彼らの商売中の服装もそれぞれの用途や使い勝手による独自のものがあります。
冒険者の世界でいえば、衣服は生活としてのものだけでなく、場合によっては防具としての役割も持ちます。
たとえば魔法使いや盗賊など、重い鎧を身につけることができない者たちです。彼らにとっては、身につけている衣服こそが唯一の防具となるわけです。
しかし、衣服はどこまでいっても衣装でしかなく、敵の剣や矢を防ぐだけの力はありません。そのため、頼りない防御力を補うためか、魔法の衣服というものも多く存在します。
姿を隠すマント、魔法を跳ね返すドレス、足が速くなるブーツ……、上げていけばきりがないほどです。単純に防御力を高めるのではなく、何らかの特殊な力を付加したものが多いのも特徴です。
服装はその人を雄弁に語る装置です。荒事に生きる冒険者であっても、少しは気を配りたいものです。それで無用のトラブルを避けられることだってあるのですから。