もともと、人間族とエルフ族には深い溝がありました。エルフたちの中には人間を野蛮で未熟な種族として軽蔑している者も多くいますし、森を荒らすゴブリンたちと同列の敵として認識する者もいます。人間族よりも長い歴史を持っているわけですから、これは当然かも知れません。人間側もまた、エルフに対しては不信感や、彼らの神秘性に対するねたみがあります。両者の歴史の中においては強大な闇の勢力に対して、同盟を結んでいる時代などもあるようですが、それでもなかなか友好的な関係とは言えないようです。
そんな中で生まれるハーフエルフの数は決して多くはありません。というのも、人間とエルフは互いに社会を共有して暮らしているわけでも、侵略し合っているわけでもないからです。基本的には、何か特別な条件の下での両者の個人的な縁によるものが大きいでしょう。たぶん、それは希な出来事のはずですから、当然ハーフエルフたちのその絶対数も少ないというわけです。
しかしたとえ、純粋なつながりとしての婚姻だとしても、それはどちらの種族からも偏見を持たれることが多いため、ハーフエルフとして生まれた子には苦労が絶えません。迫害されるというところまでいかなくとも、どちらの社会にも溶け込めないという場合はあるでしょう。
数少ないハーフエルフたちが冒険者として身を立てることが多いのも、「はみ出し者」として生きていかなくてはならない状況がそこにあるのかもしれません。