ヘカトンケイルとは、百の腕と五十の顔を持つとされる巨人です。(複数形でヘカトンケイレスともいいます。)
「百手巨人」や「八つ手巨人」などと呼ばれていますが、ファンタジー世界に登場する彼らは、多少、本来の姿から簡略化されているため、腕の数も8~12本ほど、顔も1~3といったところのようです。身長は3~6mほどですが、もっと高い身長をもつ場合もあります。
半裸で登場することが多く、近接武器を振るうことはありますが、防具の類は身につけていないようです。
暑さや寒さに対する抵抗力が人間以上ということもあるのでしょうが、もしかすると、袖をたくさん作る技術が発達していないのかもしれません。
モンスターとしては、古代の迷宮などにおいて、財宝や知識の守り手として立ちふさがることが多いのですが、邪悪な存在とは限らず、むしろ宝を悪人の手に渡さないための正義の守護者としての立場もあるようです。
登場する頻度としては決して高くはないでしょう。
しかし、もし出会ったとしても、それほど脅威に感じる必要はないかと思います。
性格の穏やか者も多く、むやみやたらと襲いかかってきるような存在ではないからです。もちろん、彼らの守る財宝に手を出そうとすれば、彼らは容赦なく戦おうとします。
そのときはかなりの苦戦を覚悟しなければならないでしょう。複数の腕から繰り出される攻撃の威力もさることながら、なかには魔法を使う者もいるからです。
ヘカトンケイルには、恐るべき怪物としてだけではなく、信仰の対象として崇められているという一面もあります。これは他の巨人族にも見られる点なのですが、ヘカトンケイルはその特異な姿からか、とくにその傾向が強いようです。
ヘカトンケイルは、倒すべき敵や障害としてよりも、そういう特別な存在としての役割を持って登場することの多いモンスターといえるでしょう。
ヘカトンケイルは、もともとはギリシア神話に登場する五十頭百手の巨人です。
ギュエス、アイガイオン、コットスという三人兄弟で、不幸な生い立ちにもめげず、ゼウスとティタンの争いにおいて、ゼウス側に勝利をもたらすという活躍を見せていました。
その後、タルタロスに幽閉されたティタンの監視に就くのですが、ヘカトンケイルに込められた「財宝の番人」や「迷宮の守護者」などのイメージはこのあたりから生まれたのかもしれません。
ところで、ヘカトンケイルの名が登場するのはファンタジー世界だけではありません。
多数多量の作業を同時に行うことのできる情報処理システムや、重要情報を守る強力な防壁といった姿でSF作品や現実世界でも活躍をしているようです。