ファンタジー世界には様々な職業が登場します。街の人々はともかく、冒険者にとっての職業とは、仕事の役割というだけでなく、彼らの生き方を示す言葉です。世渡りの手段として、運命に立ち向かうための術として、様々な技能を身につけ、称号を得て、彼らの職業は決まっていきます。そして、剣士であれ、魔術師であれ、盗賊であれ、最初は見習いやひよっこだったはずです。なかには、自分がどんな道を歩むのかを知らない者もいたでしょう。ノービスとは、そういった時期にあった彼らを指す言葉です。
冒険者になりたい! と夢見た者がすべて、最初から何らかの特別な技術、技能を身につけているわけではありません。多くの場合、手近にある武器を手に取り、荷物ひとつで住み慣れた故郷を飛び出します。この時点ではまだノービスです。彼らがどんのような職業を選ぶのか、本人の希望や野望にもよりますが、家系や生まれ育った環境というものが重大な要素として働くことも多いようです。
たとえば、魔術師を志す者は幼い頃から知識を得るための教育を受けていたり、魔術書を紐解けるだけの環境にあったのかもしれません。精霊使いであれば、自然に囲まれた暮らしがあって、普段から精霊や妖精と語り合える感性を磨いていたはずです。盗賊技能を身につける者のなかには、治安の良くない地域で生まれ育ち、いつの間にか技を覚え、当たり前のようにギルドを出入りするようになって、というものもあるでしょう。
おそらく、冒険者のなかで最も多い職業が戦士でしょう。武器を持って戦えばそれで立派に戦士を名乗ることができるからです。裕福な家系や上流階級であれば、剣の稽古をしているかも知れませんし、農家の出であれば、フレイルや槍というような武器の扱いになれているようです。とはいえ、体格が優れているとか、機転が利くというような、何らかの秀でた素質があったほうが生き延びる確率は高いでしょうが。
そういうこともあって、ノービスと呼ばれる立場の者は、多分に戦士として扱われる比重が大きいようです。
ゲーム世界でのノービスにはこれといった特徴はありません。戦士としてまだ頼りなく、他の専門的なスキルもみにつけていないわけですから当然でしょう。可能性を秘めた卵ですから、卵はたいがい丸く、飛び抜けた形をしていないものです。
突出したものはなくとも、そのかわりにあらゆる武具を扱えるというような、変わった特性を持っている場合があります。これはおそらく、お試し期間のようなものなのでしょう。なかにはノービスの間だけしか使えない特別な技も存在しているようです。
他には復活の費用が少ない、運用のコストが低いなど、冒険への再挑戦がしやすいボーナスがついていたり、初心者マークが表示されていて他者から話しかけられやすいというような特典もあります。
彼らの本当の冒険はまだ始まっていません。ノービスを卒業してはじめて、一人前のスタートラインに立つのです。明日はどっちだ。