ヴァンパイアとは、動物の、それもとくに人間の生き血を食料とする恐ろしい怪物です。
ヴァンパイアは噛みつき血を吸った人間を、忠実な僕とすることができます。この場合、その人間も下級ヴァンパイアとなってしまい、もはや人間という種族ではなくなります。
噛まれた人間は知性も自由意志も失うことはありません。しかし、主となるヴァンパイアの命令にだけは逆らうことはできません。ときには意のままに操られることもあります。
ヴァンパイアの姿形は人間とさほど変わりません。違うのは鋭く発達した牙(犬歯)を持っている点でしょうか。腕力や脚力などは、通常の人間よりも優れた身体能力を保有しています。
ヴァンパイアにはいくつかの特技があります。まず、自分の肉体を霧状に分散して移動することができます。ただし、霧状のままでは噛みついたり攻撃したりすることはできませんし、体の一部だけを霧状にすることもできません。なかには霧ではなくて、無数のコウモリに化ける者もいます。
ヴァンパイアは、その視線にも魔力を宿しています。その目を見た者は恐怖に体がすくんでしまうようです。気の弱い者ならば、それだけで死んでしまう場合もあるでしょう。
さらに、驚異的な回復力も持っています。ちょっとやそっとの傷ではすぐに治ってしまうほどです。致命傷を与えるには魔法による力か銀の武器が有効なようです。これらの武器によって傷ついた場合、回復力は失われるか、もしくは人間並みに低下してしまうでしょう。
寿命が長いということも付け加えておきましょう。なかには、不老不死というヴァンパイアもいます。こうした生命力の強さを維持するために、人間の生き血を欲しているのかもしれません。
強力な種族ではありますが、いくつかの弱点もあるようです。ヴァンパイアは神々のシンボルを嫌い、ニンニクを嫌がり、胸に杭を打てば死ぬとされています。
さらに太陽のもとでは活動が制限されるか、あるいは滅んでしまうという報告もあります。
ヴァンパイアの生命力は、負の力とでもいうもので、これに強く結びついた「土」が存在することもあります。これは非常に強力なもので、そのヴァンパイアの肉体が滅んだとしても、その「土」のもとで再び復活することができるようです。ヴァンパイアはこの「土」をとても大事にしていて、お気に入りの棺桶(昼間に眠るためのもの)に隠しています。何らかの方法でこの「土」が浄化されてしまうと、ヴァンパイアはその力を失ってしまうようです。別の場所に別の形で、本来の生命を隠しておくことは魔法の世界ではよくあることです。
しかし、そのような土を用意せずに身一つで暗躍するヴァンパイアもいます。そういった種類なのか、もしかしたらヴァンパイアのなかにも文化や習慣の違いというものがあるのかもしれません。