ウィザード・アイとは、魔法によって第三の目を作り出す呪文です。
視力を強化する類の呪文としては、比較的高度な技ですが、術のレベルとしては中級といったところでしょうか。
この魔法の目はある範囲内において、自由自在に動かすことができ、あたかもその場所にいるかのような視界を術者に与えます。優れた魔術師が用いれば、数十キロ先の光景をも手に入れることが出来るでしょう。
視力を強化するだけの呪文は他にもありますが、この術は、小さな隙間や排気口などを通って、見えないはずの場所へ魔法の目を送り込むことが可能です。
そのため開けた場所でなくとも、たとえば入り組んだ迷宮内であっても難なく偵察を行うことができるようになるでしょう。
便利な魔法ですが、しかし、いくつかの制約もあります。
まず、効果範囲や持続時間が術者の力量に左右されやすいということが挙げられます。
そして、手に入れられるのは魔法の視界だけで、音も聞き取れるわけではないという点も要注意です。
さらに、魔法の目を作り出している間、精神集中を続ける必要があるので、気が散ってしまうような別の大きな行動はとれません。
また、本来の視界が閉じられているタイプの術である場合、術者の身近に迫る危険に気付くのが遅れるかも知れません。
この呪文は、前述したように主として偵察や監視などを目的とした用途に使われているようです。
迷宮探索以外にも、道に迷ったときなどに高い位置からの視界を得て、進むべき方向を見つけ出すのに一役買っています。
軍隊での運用では、敵方の陣形や伏兵の有無の確認にも役立つ術です。
町中での覗き行為のために使う不届き者の魔術師もいるようですが、これはあまり成功しないとみていいでしょう。何を見ているのか分かりませんが、呪文への精神の集中が解けてしまうからですね。
ところで、魔術師は使い魔を召喚することができますが、この使い魔という存在はそれが得た情報はそのまま、主人である魔術師と共有することができるとされています。
これはウィザード・アイを使うのと同じような意味を持ちます。
しかも、呪文を使いっぱなしにするわけではないので、魔力の節約にもなることから、偵察を行う場合など多くの魔術師が使い魔を活用しているようです。
しかし、使い魔では敵に気付かれてしまうかも知れませんし、使い魔となる動物によっては入り込めない場所もあるかと思います。
やはり、どちらの魔法も心得た上で状況によって使い分ける、というのが一番なのでしょう。
なんにせよ、ウィザード・アイのように偵察専門の術というものは、地味で活躍の場も限られた呪文です。
しかし世の中、力押しだけでは前に進むことはできないもの。ときどきは立ち止まって、視点を変えて眺めてみるのが良いのかも知れません。