剣闘士の闘いの多くは闘技場と呼ばれる施設にて行われます。 地方への巡業などで行われる場合などは、ほったて小屋や柵で囲むだけの簡易的な闘技場が設置されるでしょう。 祭りの日などは、街の通りの真ん中で繰り広げられることもあります。 一般的には登場する剣闘士は二人。 一対一で行われます。
普通、剣闘士たちに自分が身につける武具を自由に選ぶ権利などはありません。 剣闘士の体格や戦闘スタイルなどが考慮しながら、主催者たちによって決められた武具が与えられます。
重装備の戦士同士のぶつかり合いが目的ならば、互いに体重ほどもある鎧が与えられるでしょう。 逆に軽快な闘いのために、裸に近い格好で小剣のみで戦わされることもあります。 また、それとは別に主催者や剣闘士の所有者同士で交わされたルールにのっとって、闘いの条件が決められることもあります。
たとえばカードゲームで負けた側の剣闘士は盾を与えない、サイコロを転がして出た面に書かれている武器だけを使用する、といった具合です。 装備だけでなく、剣闘士自身が自由に戦い方を選ぶことはできない、といったこともあるわけです。
さて、剣闘士の闘いは娯楽として市民たちに提供されているのが普通ですが、同時に賭けもおこなわれます。 賭け金は運営費や勝利者への賞金、それから主催者たちの収入にあてられます。
ギャンブルとしても成立すると、ときには八百長試合も仕組まれます。 誇りをかけて闘う剣闘士ならば、これは屈辱かもしれません。
しかし、もっと悲惨なのは貴族や権力者たちの争いに巻き込まれることでしょう。 たとえば、反目する相手が所有する剣闘士を、本人に見立てて謀殺することで手打ちとする場合も少なくありません。 この場合は、当たり前と言えば当たり前なのですが、剣闘士本人に知らされることはないようです。
そういう事情もあり、剣闘士の生存率は決して高くはないと言えるでしょう。
剣闘士競技はもともとは儀式のひとつでした。 古代において、似たような風習は各地で見られます。 重要な人物の葬儀の場で行われたり、神々に捧げるものであったり、あるいはもっと単純に部族の長を決めるためのものです。