ヘイストとは、対象者の動作の速度を上昇させる運動系の呪文です。
クイックネス、スピードなど呪文の名前は色々ありますが、効果はだいたい似たようなものです。 上昇する速度の度合いは、およそ倍程度になります。 類似呪文のなかには、術者の魔力に応じて変化するものもありますが、どちらかといえばこれは少数派です。 術者の魔力が影響するのは、術の効果時間くらいのものでしょうか。
この呪文をたとえば戦闘中に使えば、通常の倍の速度で動き回り、倍の手数で打ち込むことができる手練れの戦士になることも可能です。 しかし、注意しなければいけない点は、相手の動きが遅くなるわけではないということです。 つまり、相手の攻撃を見切ることができなければ、それを避ける間もなく打ち倒されてしまうでしょう。 もっとも、世の中に普及しているこの呪文の多くが、ある程度は動体視力や反射神経も強化する効果を持っているのでそれほどの心配はいらないのですが。
もし不安ならば、相手の動作を鈍くしてしまう呪文スローを使用するのも手だと言えます。
ヘイストは強力な呪文ですが、それなりの代償と覚悟も必要となります。 倍の速度で動くことができる間、呪文の対象者の時間もまた倍の速度で流れてしまう場合があるからです。 全ての術がこういった副作用を持つわけではなく、疲労の度合いが倍以上になるという程度で済む呪文もあります。 これも下手をすれば命に関わる場合があるので、やはり乱用は慎むべきでしょう。
運動や変化の呪文の多くがそうであるように、ヘイストの呪文にもその効果を打ち消してしまう対抗呪文が存在します。 それが、スローです。 対象者の動作の速度を鈍らせてしまうという、ほぼ正反対の効果をもつこの呪文には注意を払うべきでしょう。 ヘイストの影響下にある対象に、スローの呪文を発動させると互いに打ち消しあい、両者の呪文の効果はかき消えてしまいます。
この場合、ヘイストの使用者はもとの速度に戻ってしまっていることに気がつかなくてはいけません。 スローを唱えた側も、相手の速度が元に戻ったに過ぎないことに気をつけなくてはいけません。
どんな呪文も、術をかけるタイミングと知恵次第というわけですね。