Gun, Cannon
剣と魔法のファンタジー世界においても、しばしば銃や砲の存在が認められている場合があります。 しかし多くの場合、現実世界で使われているような機関銃や高性能な拳銃などはごくごくまれで、火縄銃やフリントロック銃などから一歩進んだ程度の機構を備えた簡素な銃がほとんどです。
大砲は銃に比べると比較的登場する機会が多く、攻城兵器や城塞兵器としてその姿を見ることができます。 その威力たるやすさまじく、轟音が鳴り響き、大地をえぐり、着弾場所の周囲のあらゆるものを吹き飛ばします。しかし、現実世界の大砲は命中率が低かったため、案外、役立たずの兵器でしかありませんでした。戦場の賑やかし、といってはなんですが。
さて、ファンタジー世界での銃は、大きくは二つの種類に分けることができます。 ひとつは、火薬の爆発力によって弾丸を発射する、いわば現実世界と同じような構造で、ライフルとして広く登場します。 古代王国の遺跡から発掘された未知の兵器として扱われることもあります。 仕組みを説明する際には、「小さな火球の術を発生させ、金属の塊を前方へ飛ばす魔法の棒杖(ワンド)」などと表現されるようです。
もうひとつは、魔法の弾丸を撃ち出す銃で、魔砲、魔法銃などと呼ばれる、一種の魔法の品として登場します。 あらかじめ魔法の効果を込めた弾丸を用意しておくなどの工夫は必要となりますが、呪文や儀式といった複雑な手順をふまえずとも魔法の力を発揮できる手段として、非常に便利な道具として活用されています。 現実世界でいうところの麻酔銃や煙幕弾、火炎放射器、スタンガンといったものを、魔法の銃と弾丸によって再現するようなものでしょう。
現実的に考えれば、剣と銃の共存はありえません。剣や槍と鎧の騎馬よりも、機敏で機能的な銃撃の方が殺傷力に優れていますし、現在、歩兵の主力兵器としてわざわざ刀剣類を採用する軍隊もありませんから。
どんなに性能の良い鎧でも、飛び交う銃弾の前では役には立たないからです。重い鎧は兵士の動きを妨げ、狙いやすい標的に変えてしまうでしょう。また、どんなに切れ味の良い剣も、近寄る前に撃たれてしまったら意味がありません。 つまり、実用に耐えうる銃が普及した時点で、剣と鎧は過去の遺物となってしまうわけです。
しかし、これはあくまでも史実の話。 ファンタジー世界では魔法の力が関わってくるため、銃も手段のひとつでしかなくなります。 たとえば、前述したような魔砲としての銃であれば、ひ弱な魔術師でも通常通りの呪文によって対抗することができるわけです。 通常の弾丸を撃ち出す鉄砲であったとしても、風の精霊などによって簡単に弾丸の軌道を逸らすことができるかもしれません。 そうなってしまえば、銃の優位性は失われてしまうでしょう。(もっとも、魔術や呪術が普及している世界の場合ですが)
また、銃がまだ未発達な武器だった時代には、軽装の剣士と共存している期間が、短いとはいえ確かに存在しています。 とはいえ、徐々に高性能化していく銃に対して、いかに避けるか、いかに防ぐかをあれこれ工夫していく苦難の時代でもありますが。 なにはともあれ、銃という武器は、現実世界とは違う一面を見せながら活躍する、重要な道具のひとつといえるようです。