タックとは、針状に尖った剣身を備えた刺突戦法専門の刀剣です。切り刃はありませんが、布や革の鎧はもちろん、チェイン・メイルを着込んだ相手に対しても絶大な威力を突きつけます。
全長は100~120cmほどあり、剣身が60~80cmほどで両手で扱うように柄は長めです。身幅は根元2~3cmから先端にいくに従って細く尖っていきます。剣身の断面は先端ほど丸く、根元ほど四角や六角の形状をしているようです。
フランス語でエストクと呼ばれるこの刀剣は、14世紀から16世紀にかけて騎兵や下馬した際の補助の武器や主要な武器として活躍しました。
チェイン・メイルだけでなく、初期のプレート・アーマーすら貫通したそうです。
タックはやがて、鎧のさらなる発達と、それからの衰退によって使われなくなりました。
両手用の剣ですが、片手でも扱えるように軽量で柄の短いものも存在します。
ファンタジー世界では、表舞台で暴れ回る冒険者たちにはあまり使われていないため、目立った武器ではないようです。
刺突戦法に限られていることと、比較的大きな武器であることから敬遠されているのでしょう。幾多の戦場を駆ける傭兵たちは、鎧を着込んだ敵兵を相手にする機会に恵まれているので、タックを使いこなして手柄を立てる戦士もいることだと思います。
しかし、冒険の場でまったく役に立たないかというとそうでもありません。ドラゴンをはじめとして、硬い鱗や殻をもったモンスターは数多くいますし、もめ事に巻き込まれれば人間の兵士を相手にすることもあるからです。
また、刺突戦法であれば、狭いダンジョン内でも自在に行うこともできます。剣と同じ扱いで防御を行える点も見逃せない特長です。
タック一本で渡っていけるほど冒険の世界は甘くはないでしょうが、その価値は決して低くはありません。
竜退治に成功したあかつきには、巨大な串焼きでも作って祝ってみてはいかがでしょうか。竜の肉が食べられるのかどうかはわかりませんが。