アルケミストとは、生命やこの世の物質の謎を解明し、宇宙の真理を知るための研究を重ねている者たちです。この分野を錬金術といい、不老長寿の霊薬や黄金の製法を生み出すであろうと期待されています。
研究には資金が必要で、裕福な貴族や、ときには国家をパトロンにしていることが多いようです。永遠の生命や無限の富、錬金術から得られる新しい技術や知識をあてこんでの出資でしょう。
錬金術は、一般の物質や人間の霊魂を「完全な」あるいは「より高位の」存在へと変化・変換、精錬しようとする技術です。そのために呪術や魔術の法則を用いることもありますが、彼らの本質は魔法使いではなく科学者といえます。
アルケミストは、研究室にとじこもり、気むずかしくて閉鎖的です。あまり外へ出歩くことも多くありませんが、研究に必要な材料を手に入れるために自ら冒険に赴くアルケミストもいます。
その際の服装ですが、戦士や魔法使いの修行を積んでいる者はそれに準じた装備をするでしょう。そうでなければ護身程度にショートソードなどの軽くて扱いやすい武器にレザーアーマーといった、体の動きを妨げない鎧を身につけているかと思います。
冒険活動や戦闘のなかでは、自分の専門分野を活かして、自身で開発した新兵器や魔法工学的なアプローチによって状況を打開することが多いようです。
ところが、彼らのすべてが必ずしも良い研究だけを行っているとは限りません。真理への探究が優先するあまり、秘術の開発に人間を材料にしてしまうなど、人の道を踏み外してしまう者もいるようです。
その代償は大きく、悲劇的な結末が待ち受けていることがほとんどなのですが……
ファンタジー世界に登場するアルケミストには、基本的には魔術師として、魔法の補助に科学の知識を用いる賢者としての人物、という場合もあります。
また、奇妙な道具や日用品を開発してはそれを売って生計を立てる、発明家として社会に貢献してる者もいるようです。医者として特殊な薬品などを開発して治療に役立てることもあります。
しかし結局のところ、錬金術は常に未完成です。不老長寿の霊薬もいまだに完成せず、解明できていない謎も数多く残したままアルケミストは去ってしまうことが多いわけですが、とはいえ、彼らが社会の発展に大きく寄与していることは間違いないようです。
現実世界でのアルケミストたちは、エリクサーや賢者の石を得るために様々な試行錯誤を繰り返しながらの多様な分離精製の事例、実験の末の発明や発見などの積み重ねによって、現代の化学の礎を築いたとも言われています。
ファンタジー世界での錬金術師とは違って、他の職業に就きながら研究を行う、兼業アルケミストも多かったようです。
アラビアやヨーロッパの錬金術では蒸留の技術や硝酸、硫酸、塩酸、王水、中国の煉丹術では火薬の発明など、アルケミストたちの残した功績は多くあります。当時の人々の生活にまで影響を与えるほどでした。磁器の製法の再発見や、酒類の発展などはとくにそうでしょう。
しかし、彼らアルケミストにとってこれらは功績と言うよりも、あくまでも不本意な副産物に過ぎなかったのかもしれません。