ドワーフ族のよきとも

斧/アックス

は、ファンタジー世界に欠かせないアイテムのひとつとして、多くの冒険者や戦士達に愛用される武器です。棍棒、鎚鉾などに並ぶ殴打武器の一種として扱われることもある、古い起源を持つ原始的な武器ですが、それだけにあらゆる地域で様々な形状のものが作られ多用されています。

基本的な形状としては、長く伸びた棒状の柄の先に切り刃をもった斧頭を取り付けられています。槌/ハンマーなどと構造としてはまったく同じといって良いでしょう。柄には振り回したときに手が滑るのを防ぐために、柄の後端に紐の輪がつけられていて、これに手首を通してから握るという構造のものもあるようです。またこれは、紐ではなく、剣のポンメルのように石突きが取り付けられているものもあります。

斧に使われる材質は様々です。柄は木製で、斧頭は金属というパターンが多いのですが、バトルアックスなどでは全金属製のものもたくさんありますし、歴史を辿れば形を整えられた石が斧頭として使われている時代もありました。

斧の利点はなによりもその重量バランスにあります。もともと殴打武器として発達したため、先端が極端に重くなっているわけで、同じ長さの剣を振り回した場合に比べると、その破壊力は格段に大きくなります。つまり、小ぶりの斧であっても十分な威力を備えているのです。そのため、冒険者の中には短剣代わりにハンドアックスを選ぶものも多いようです。

アックスは、無骨で、バリエーションもソードほど豊富ではありませんが、それでも戦士の武器として主役を張る存在といえるでしょう。

さて、では主武器としての斧はドワーフ族の武器が有名ですが、その他は蛮族の戦士やゴブリン族、オーガーといったところでしょうか。人間の戦士も好んで使いますが、皆、体力腕力に優れた者たちばかりです。

野蛮なイメージがまとわりつく斧ですが、甲冑をつけた重装兵を打ち倒すことのできる武器でもあります。それに、ファンタジー世界には人間の甲冑など比べものにならないほどの硬さを持つ怪物もたくさんいます。金属製のゴーレム、甲殻に覆われた巨大昆虫、輝く鱗を持つドラゴン、分厚い毛皮の野生動物……

剣では太刀打ちできない相手も多い世の中、冒険の相棒として斧を選ぶのもひとつの良い選択肢のひとつではないでしょうか。

斧と歴史

斧の起源は古く、旧石器時代のものから、現在の斧と似た構造を持つ新石器時代の頃から見られます。定住と農耕作業に必要な道具として改良され大小様々な斧が生まれています。おそらく戦闘でも威力を発揮していたはずです。

各地で文明が発達し、青銅器時代を迎える頃には刀剣類が活躍の幅を広げると同時に、武器としての斧はその地位を失っていきます。ギリシャ・ローマ時代には蛮族の武器の象徴として、文明社会のはみ出し者となってしまいました。

さらに後の時代、蛮族と呼ばれていた者たちが台頭してくると斧は再びよく使われるようになります。フランキスカは、フランク人の使う投げ斧として有名です。

北欧の海賊やアメリカ先住民は、斧に対しては親しみを感じていたようです。ファンタジー世界で言えば、ドワーフ族にとっての斧が似たような存在だと言えます。戦いそのものを象徴する刀剣とは、やはり扱いが違うということでしょう。

戦いだけでなく、歴史の節目や文明の広がりを切り開いてきたのは斧でした、というのは言い過ぎでしょうか。しかし、生活のための道具や工具として発達した経緯を持つ斧にはそれだけの力があるように思います。新たな時代というのも、人々の暮らしでつくらているわけですから。


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