完全防護のヘルメット

クロス・ヘルム

クロス・ヘルムとは、完全に頭部を覆う形をした板金の兜です。顔面はもちろん、首まわりまで防護されています。

スカルの形状は、頭部に密着するように丸みを帯びていて、頭頂部にはトサカ状の突起があるのが特徴です。目や鼻のあたりを覆う部分は可動式のバイザー状になっていて、上下に開閉することができます。

首の付け根はネック・ガードが完全に覆っているので肌の露出する部分はありません。

全身鎧の一部品としてではなく、クロス・ヘルムだけが武具屋に売っている場合もありますが、そのときはかなり上位の防御効果を持った兜として扱われています。

クロス・ヘルムを用いるのは、全身を板金鎧に身を包んだ騎兵や戦士となります。たいていは鎧と一式になっていて、この兜だけを身につけるというパターンはあまり見かけないようです。

兜としての完成度は高く、これ以上の防御力はない、という性能を発揮するでしょう。しかし、頭部全体が覆われているため、サイト(目のあたりに設けられた隙間)が限られているせいで視界は悪くなっています。

そうしたことから、様々な状況に対処する必要のある冒険者や探検家などはあまり使いたがりません。戦場だけを活躍の場とするタイプの傭兵であれば、このクロス・ヘルムをかぶっている者もいるでしょう。

史実のクロス・ヘルムは、形状を見るとアーメットのように見えますが、流れとしてはサーリットを強化したり、発展させて作られたようです。

16~17世紀によく見られた兜ですが、その後の銃器の発達や一騎打ちの衰退とともに戦場から姿を消していきました。大勢の敵を把握し、相手をすることが多くなった時代には合わなくなったのでしょう。

サーリットから発展した兜としてバーゴネットがありますが、こちらは軽量化と広い視界の確保がされ、その後の騎兵の主要な兜として用いられていくわけです。

しかし、今でも描かれることの多い騎士の姿は、このクロス・ヘルムを着用したイメージが強いように見えます。

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アーメット, サーリット

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