ナックルダスターとは、手指の保護と拳打の威力を高めるために装着する武具です。多くは金属製で、拳を強く握り込むための柄と指を保護するリングが一体化した構造をしています。実際の打撃は、この四本指を保護するリングが担うことになり、それを拳の中の柄が支えています。
トゲを備えて攻撃力を増しているものや、手の甲や打拳面全体を武装できるものなどがあります。短剣の柄やナックルガードがこの機能を備えていることもあるようです。
セスタスとも重なる性能をもった武具ですがナックルダスターは、握りこむことで装備できる点にあります。つまり、すぐに取り出せさえできれば、とっさの場合にすぐに臨戦態勢に入れるわけです。ベルトのバックルや装身具、荷物の留め金などに偽装しておくことで隠し武器としては、武器を取り上げられたときの最後の手段としても活躍できることでしょう。
そのため、刀剣類などの他の武器と同様、一般の市民が持ち歩くことを禁止している街もあるかもしれません。殴り合いの喧嘩で済むはずが、殺し合いに発展しかねませんから……
ナックルダスターの威力は抜群で、素手による拳打とは比べようもない破壊力をもたらします。素手では殴れない硬い構造物にも拳打が有効になり得ます。また、戦う相手が武器を持っている場合、たとえそれが刃物の類いであっても「受け止める」という選択肢も生まれます。拳闘士や格闘士として冒険の道を歩む者ならばひとつくらいは所持しておくといいかもしれません。きっと、ゴーレムや骸骨兵などとの戦闘には役立つでしょう。
いざというときの心強い味方ではありますが、魔法の力を秘めた品はあまりみられません。冒険や戦場の第一線で活躍する武器ではないことや、荒野や遺跡に挑む冒険者の武術士であれば呪文も尻込みするほどの秘技のひとつやふたつ身につけている、ということも関係するのかもしれません。
とはいえ他の武具と同様、魔除けのパンチを撃つために呪詛を刻み込んだものや、様々な敵に対応するために火地風水の属性を帯びたものくらいは存在していはずです。
しかし、最も大事なのは威力のある拳打を放つための肉体を作り上げることです。それは一朝一夕でできることではなく、魔法にたよることでもありません。格闘士にとっては、日々積み重ねた鍛錬こそが真に拳を支える武器なのです。