信じるのは拳のみ!

セスタス

セスタスとは、拳闘士など徒手空拳で戦う者が自身の拳の保護と打撃力の向上のために拳に巻き付ける紐や帯を指します。

鍛え上げられた拳はときに、拳打の衝撃によって脱臼や骨折した骨が突き破るなど、拳士自身の拳を痛めることがあるため、こういった装具は不可欠といえるでしょう。

セスタスは丈夫な革の紐か帯で、長さは50cmほど、これを手の甲と平、手首などに渡って引き締めるようにまきつけて使います。こうすることで拳を固めて怪我を防止し、握り込みやすくなって打撃力も増すわけです。

包帯のような形状の布の帯などもありますし、他にもグローブのように指から前腕全体までを覆うようなものや、鋲や棘を備え、破壊力を抜群に増したものなど、発展させたものも存在します。むしろこういったセスタスの方が頻繁に登場するくらいです。

闘技場での試合を行う拳闘士たちがもっともよく使いこなす武器ですが、軍団同士でぶつかり合うような戦場ではあまり見かけません。拳打以外の殺傷力を付加されたものでない限り、金属鎧などに対しての威力は見込めないからです。

しかし、武器を持ち込めない場所での護衛や、一般市民に紛れ込む必要のある戦闘部隊の兵士たちが身につけていることもありますので、鍛えられた肉体と磨かれた技とが合わされば、立派な武力にはなり得ます。

冒険者にも比較的なじみの深い武器かも知れません。たとえ素手での格闘が得意でなくとも、グローブ形状のものであれば手甲のかわりの防具として働きますし、普通の武器を振るうのにも支障はないでしょう。そして、武器を落とした場合などとっさときに、思い切りパンチを撃てるわけです。得物を持ち替える必要がない点は重要です。

また、町中などでの不意の襲撃や路上のケンカなどに遭遇した場合は、本来の革紐タイプのものであれば、懐から出して利き腕だけにでも巻くことがあれば非情に心強いと思います。

革の紐から手甲までバリエーションは豊富ですが、残念なことに魔法の品はあまり見かけません。使用者たちが魔法の力に頼らない傾向にあるのか、それとも魔術師たちの目にとまらなかったのか。各地の神話にも登場することはなく、また妖精族や妖魔たちも扱いません。

セスタスは、格闘術も含めて人間族が一から築き上げた武勇の証かも知れません。野蛮な一面はあるでしょうが、血と汗の結晶は、神秘の魔法とはまた違う魅力を放っているようです。

名称
セスタス/Cestus
種別
武具
種類
格闘武器
備考

セスタスはラテン語のカエストゥス/caestusから。古代ローマの拳闘士が使用していた。最も簡易なものは長さ50cmほどの革の紐。前腕部まで巻くものは革の帯でもう少し長い。

古代ローマの拳闘は、拳闘士同士が丸裸で行うこともあり、そのとき身につけるのはこのセスタス、革の紐だけだった。人類史上最もシンプルな武器のひとつかもしれない。

ボクシングなどで使用するバンデージもセスタスの一種。

関連
拳闘士, ナックルダスター

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